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鬼ヶ瀬塚村
第20章 懺悔の時間
『だから私達はあの子に期限を与えたの。大学の4年間だけなら構わないと、卒業したら必ず帰ってくるようにと…だけど、あの子は帰って来なかった』

僕は頭を項垂れた。
そして膝の上の両手をギュッと握りしめた。
弘子さんはそんな僕を見て"ふふッ"と笑った。

『顔を上げなさいな、あなたを責めてるわけじゃないのよ』

『…けど』

僕は顔をゆっくり上げて弘子さんを見つめた。
シワに埋もれた涼やかな目が優しく笑みを作っていた。

『信人さんみたいな素敵な人に出会ったら、私だって帰らなくなっちゃうわ』

親子だな、そう思った。
真理子さんと同じように弘子さんは男をゾクゾクさせるような言葉を平気で言う。
真理子さんは内面は母親似だ。
確信した。

『あなたに恋して夢を叶えて…あの子は遠い存在になったわ。私はやがて毒を飲まざるおえなくなった…宗二さんがいくら村人を説得して止めようとしても、彼らも私も許さなかった。掟なのだから…私は母として娘の為に毒を飲む事を選んだわ、戸惑いは全くなかった。…けれど…月日は残酷ね』

弘子さんは僕から目を自分の手へと移した。小さく痩せこけた白い手が小刻みに震えていた。

『毒に侵され、立っているのもままならなくなった…村人は優子に成人の儀と称した恐ろしい事を実行しようと、ここ最近はずっと話合ってた』
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