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鬼ヶ瀬塚村
第20章 懺悔の時間
『そッ宗二さ…んなんかは…ううッ…うぇ………僕にここに…残るよう……うッ…凄く…凄く…は、話して…きて…』

『そうね』

『僕ッ…こんな…こんなの…初めてで…なんだか…変だけ…どッ…怖くて、嬉しい…んです』

『喉元に刃をむけながらここにいて欲しい、必要だなんてそうそう言われる事ではないわね…宗二さんは刃なんて使わなかったでしょうけど』

『…は、はい…』

僕は膝の中で泣きじゃくった。
積もっていた不安や葛藤や怒りや悲しみが、この村の矛盾によって解消されていく。

村は村長を、真理子さんを必要としている。
そして真理子さんは僕を必要としてくれている。

ここにいなきゃならない。

めちゃくちゃだと思う。
けど、その抗えない村の掟が心地よかった。

いつも生きている感覚があやふやで、空中を歩いているようだった僕。
罪という名の秘密を共有し、この村に束縛されるのは何故だか安心に感じた。

自分自身をもてあまし、意味のない時間が過ぎる不安にどうにかなりそうだった僕。
いつも誰かに縛られていないと1人では生き方を見いだせなくて不安だったのだ。
自分を不安で束縛させるより、この狂った村の狂った理由で必要とされ、束縛させる事の方が僕には優しい。

もう、鬼が怖くなかった。

もう、東京に戻れない。
その真実がどうしようもなく怖くて嬉しかった。
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