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鬼ヶ瀬塚村
第21章 掟の教え
『もう苦しまなくていいのよ、宗二さん。勿論咎めは受けてもらうけれど…私は…私個人的には不本意だけれど』
少し厳しい口調で弘子さんは言った。
元村長の威厳は健在だ。
宗二さんはうつむいたまま、小さく呟いた。
太鼓囃子でかき消されそうなその声はこう言っていた。
『すまない』
と。
弘子さんは右手を顎に添えながらふふふと笑い続けた。
『先祖が作ってきた文化や掟で私達は幸せに暮らしているけど、時にその私達を守ってくれる掟が私達を苦しめるのね…けれど、宗二さん…あなたは私だけではなく真理子と優子も守ってくれました。あなたは立派な夫であり父親です』
宗二さんは口をグッとへの字の形曲げ、涙をこらえているようだった。
『さぁさぁ、真ん中へ…みんなに信人さんを紹介しなくちゃね。このへんてこな格好の新しい仲間を』
弘子さんは微笑みながら僕に手を差し伸べる。
僕はその手を取った。
今にも折れそうな小枝のような手に導かれるようにして僕は祭りの中心へと歩みを進めた。
太鼓囃子が鳴り止み、酒に騒いでいた男達も弘子さんの姿を目にして慌て姿勢を正した。
女達や子供達数人も大人しくしている。
真理子さんも夜叉の面を外し、汗で濡れた髪をかき分けながら弘子さんを見つめていた。
『皆さんに聞いていただきたいお話があります』
弘子さんは僕の隣で集まっている村人に少し大きな声で言った。
少し厳しい口調で弘子さんは言った。
元村長の威厳は健在だ。
宗二さんはうつむいたまま、小さく呟いた。
太鼓囃子でかき消されそうなその声はこう言っていた。
『すまない』
と。
弘子さんは右手を顎に添えながらふふふと笑い続けた。
『先祖が作ってきた文化や掟で私達は幸せに暮らしているけど、時にその私達を守ってくれる掟が私達を苦しめるのね…けれど、宗二さん…あなたは私だけではなく真理子と優子も守ってくれました。あなたは立派な夫であり父親です』
宗二さんは口をグッとへの字の形曲げ、涙をこらえているようだった。
『さぁさぁ、真ん中へ…みんなに信人さんを紹介しなくちゃね。このへんてこな格好の新しい仲間を』
弘子さんは微笑みながら僕に手を差し伸べる。
僕はその手を取った。
今にも折れそうな小枝のような手に導かれるようにして僕は祭りの中心へと歩みを進めた。
太鼓囃子が鳴り止み、酒に騒いでいた男達も弘子さんの姿を目にして慌て姿勢を正した。
女達や子供達数人も大人しくしている。
真理子さんも夜叉の面を外し、汗で濡れた髪をかき分けながら弘子さんを見つめていた。
『皆さんに聞いていただきたいお話があります』
弘子さんは僕の隣で集まっている村人に少し大きな声で言った。