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第21章 掟の教え

多くの日に焼けた黒い顔に並ぶ目が弘子さんを見ていた。

炎に照らされたそれは赤鬼の様だった。

『今日から私はもうこの場に立つ事は無いでしょう。鬼神様からお怒りを貰うような力がなく情け無い舞はもうおしまい…今日からは新しい村長である真理子が立派な舞を勤めてくれるでしょう』

全部で何人なのかはわからないが、50数人いる村人達は一斉に拍手を彼女に送った。

『皆さん、ありがとう。そして紹介するわ。彼は田中信人さん』

目が一斉に僕を見つめる。
こんなおかしな格好の僕を彼らは笑う事もなく真剣に見ていた。
物珍しそうに、そしてどこか不安げに。

『…田中…です』

僕は小さく頭を下げた。
胸がドキドキした。
抗えないこの流れが心地いい。

『彼は真理子の夫になる人よ、ね、信人さん』

弘子さんが僕を見上げている。
夫…僕が…。
手で掴めないようなあやふやな感触だった。
飛び込んできた彼女のその言葉はとても不思議な感触だった。

『めでてぇなぁッ！なぁ、真理ぢゃんよぉッ！』

盃を持ち上げながら、白髪の男が真理子さんに笑った。

『やめなっで、あんだぁッ！まだ、弘子ざんの話の途中だばッ！』

割烹着姿の女性が彼の手を下ろさせようとしている。

真理子さんは少し恥ずかしそうに地面を見ていた。