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第21章 掟の教え

『あらあら、気が早いわね』

弘子さんは男を見て微笑んだ。

『彼には、信人さんには村を学んで貰ってから婚礼の儀をして頂こうと考えています』

弘子さんは一同に目を配りながら、一言一言確かに伝えていった。

『あなた方も彼が困っていたら手助けしてあげてちょうだい。けれど、無理強いはしないで？彼の肉体や魂はまだこの下の世界の物なのだがら』

『…お母さん…あのね』

真理子さんが不意に言った。

『身体はもうここの物だと思うの…』

真理子さんの言葉に弘子さんは険しい表情になった。今まで見せていた穏やかな表情がまるで全て嘘だったかのようだ。

『知らせずに食べさせたの？』

弘子さんが真理子さんに問う。

『彼…飲んだわ』

真理子さんが答える。
何の話をしているのかわからなかった。

『わかっていて飲ませたの？』

『うん…』

俯く真理子さんを見て弘子さんが言った。

『何人たりとも彼に無理矢理だぬきを口にさせてはなりませんッ！』

だぬき…？

『あの…何の話ですか？』

僕はハァハァと息をあらげる弘子さんに訊ねた。苦しそうに胸元を押さえている。

『あなたは…あなたは…飲んだのです。だぬきの一部を』

『だぬきって…？』