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第21章 掟の教え

弘子さんは炎の輝きを反射させた目で僕を見上げて答えた。

『奴奴が持ち込んだ死体の事です…』

言われた瞬間僕の膝は重力に耐えられなくなり、その場に崩れ落ちた。
もう胃袋は空っぽなのに、何かが込み上げてくる感触がした。

一体いつ？
僕は死体を口にした？

『けど…美味しかったでしょう？』

炎を背にした真理子さんが言う。
美味しかった？
何を言ってるんだ？

『信人さん、あなたはこの村のお茶を口にしたわね？』

今度は弘子さんが震えた声で言う。

『あ…』

そうだ。
昨日の昼、そして晩飯でも…それから今日の昼…安定剤を飲む時も…。
あれは…一体…。
麦茶じゃないのか？

『あれは単なる麦茶ではありません…死体の内臓を乾かし粉砕した物と、血液を何度も何度も煮立てて出た湯から作られています…』

『…え…え？』

『あなたはそれを飲んだのですよ。鉄の味が微かにしなかったかしら？』

『…温泉が…近い…からじゃ…？』

ボンヤリした頭のまま僕は答える。

『違うわ…あれは、人間の血液の味よ』

人間の血液の味…。

込み上げてきた物を防ぐように僕は両手で口をおおった。
けれど、薄く黄色を帯びた胃液が逆流して落下し、地面へと吸い込まれていった。
酸味を帯びた臭いに村人達は顔をしかめた。