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鬼ヶ瀬塚村
第21章 掟の教え
弘子さんはうずくまる僕の背をさすりながら一同に声をあらげた。

『わかりましたねッ!?何人たりとも彼に無理矢理だぬきを口にさせてはなりませんッ!!本人に意志がなければだぬきの汚れで彼は呪ノ神に侵されますッ!!』

村人や真理子さん達は黙っていた。
やがてちらほらと"異議なし…""掟だっぺな…"と声が上がった。

『立てるかしら?』

弘子さんは優しく言った。

僕は口元を拭いながら立ち上がった。

目の前には炎を囲む鬼の群れ、中心には美しい夜叉、竹林のざわめきが、蛍と月の輝きが、ひぐらしやカエルの鳴き声が、ここを異質な空間へ誘う。

僕は死体を既に口にしていたのだ。
美味しい、美味しいと飲み干したのだ。
あの中には悲しみや苦しみや怒りがあったのだ。
死者の悲しみと苦しみと怒り。
奴奴の悲しみと苦しみと怒り。

僕はそれを身体に取り入れ、血液循環で身体中に巡らせてしまった。
僕の中に死者がいる。
殺された誰かがいる。

身体の奥底がムズ痒く、ゾクゾクした。

『とにかく、一度身体を綺麗にしましょう?ね?』

立ち尽くす僕に弘子さんが言った。

『真理子、彼を鬼流しの湯へ連れていきなさい』

『…わかったわ』

真理子さんは僕に歩み寄った。
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