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鬼ヶ瀬塚村
第28章 横山総合診療所
やがて前方になかなか立派な建物が見えてきた。
白い塗り壁に黒い屋根瓦、立派な門を構えた建物だ。

建物のすぐ脇は水田で、畦道をまたいで砂地で出来た駐車場があり、4~5台程駐車出来るようだった。

白いセダン以外は駐車もなく、達弘さんは一番手前へと軽トラを頭から止めた。

『降りれ』

言われて僕はシートベルトを外す。
軽トラから降りて改めて建物を見ると、住宅兼診療所なのか横長の造りだ。

門には石板に削られた文字で"横山総合診療所"と掘られていた。
文字の溝には蟻が世話しなく動いているのが見える。

内科だけではなく外科、そして産婦人科、整形外科、歯科、循環器科、精神科、血液内科、眼科と田舎の診療所の割にはバラエティに富んでいる。

『お医者さんが何人かいるんですか?』

僕が門の前で財布から診察券を探す達弘さんに訊ねると達弘さんは"んだ"と返事をした。

『横山んぢば一族揃っで医者じゃ。みんな大人になっだら仙台だどが函館で医者の勉強ばずんだ。俺の幼馴染みに長政っで野郎がいで、そいつはここの末の五男坊だ』

『五人兄弟ですかッ?賑やかそうですねッ!』

『まだだ、姉貴と妹もおるば。8人だ。だげんど下2人の妹は余所の子じゃ…』

『え…?血の繋がりがないんですか?』
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