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鬼ヶ瀬塚村
第28章 横山総合診療所
『奴奴の子供だ。下ば12歳上ば19歳で今仙台で大学生じゃ。置いで行ぎやがったんだ…自分だけ綺麗サッパリになっだ途端よ、死体運び手伝わせだガキんぼ二人置いでいぎやがっだんだ…もう8年前の話じゃ』

『………』

奴奴は新しい人生を謳歌する為に我が子をこの鬼ヶ瀬塚村に置き去りにしたのか…。

『胸糞わりぃっぺよ…だがら、チビなじょこガキが一匹ウロチョロしてても余計な事ば言うなよ?』

『わかりました』

『おら、行くぞ』

達弘さんは診察券を口にくわえると、ギュウギュウとニッカパンツのベルトを絞め上げた。

『緊張するっぺよ~…』

僕と達弘さんは横山総合診療所へと足を踏み入れたのだった。

『荒岩さんね、お待ちしてたわ』

窓口でナースキャップを被った女性が笑顔を向けている。
胸元の名札には"横山早苗"と表示されている。

『おう、結果聞きに来たっぺよ』

達弘さんが女性に診察券を渡す。
それを丁寧に受けとる彼女の視線が僕に移る。

少し日に焼けた黒い肌が深いシワを作って笑みを浮かべた。

『あなた、噂の東京の方?』

『え?…あ、はい…田中と言います。よろしくお願いします』

僕は窓口へと頭を下げる。
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