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鬼ヶ瀬塚村
第28章 横山総合診療所
『少しお待ちになってね』
女性は窓口から離れると、奥の扉を開けて待合室にやって来た。
スラッと背の高い人だった。
年の頃は弘子さんや邦子さんと同世代だろうか。
愛嬌のある顔立ちの可愛い人だった。
『初めまして、私、横山の家内の早苗と言います』
彼女は模範過ぎる程美しく礼をした。
つられて僕も頭をヒョコヒョコ不恰好に振る。
『東京の方なんて珍しいわ。お生まれはどちらなの?』
『生まれは神奈川の横浜なんです』
『まぁ、随分と都会の方ね。中華街だとか懐かしいわ…あら嫌だ、ごめんなさいね…私も東京の人間だったのよ』
『東京で先生に惚れぢまっですぐ結婚じだんだっぺよ。先生色男だがんねぇ』
達弘さんはそう言うと、待合室の小さな長椅子に腰かけ備え付けの本棚から漫画を取りだし読み初めた。
『ふふふ、村一番の色男さんはあなたに決まりそうね田中さん。困った事があったらいつでもいらしてね、うちは自慢の名医ばかりなの』
気品溢れるその仕草はなんとなく弘子さんによく似ていた。
知的で如才ない感じだ。
『達坊ーッ!!』
不意に甲高い声が奥から響き、白衣の女性が飛び出してきた。
長い黒髪をポニーテールに結び、ややケバい化粧をした若い女性だ。
女性は窓口から離れると、奥の扉を開けて待合室にやって来た。
スラッと背の高い人だった。
年の頃は弘子さんや邦子さんと同世代だろうか。
愛嬌のある顔立ちの可愛い人だった。
『初めまして、私、横山の家内の早苗と言います』
彼女は模範過ぎる程美しく礼をした。
つられて僕も頭をヒョコヒョコ不恰好に振る。
『東京の方なんて珍しいわ。お生まれはどちらなの?』
『生まれは神奈川の横浜なんです』
『まぁ、随分と都会の方ね。中華街だとか懐かしいわ…あら嫌だ、ごめんなさいね…私も東京の人間だったのよ』
『東京で先生に惚れぢまっですぐ結婚じだんだっぺよ。先生色男だがんねぇ』
達弘さんはそう言うと、待合室の小さな長椅子に腰かけ備え付けの本棚から漫画を取りだし読み初めた。
『ふふふ、村一番の色男さんはあなたに決まりそうね田中さん。困った事があったらいつでもいらしてね、うちは自慢の名医ばかりなの』
気品溢れるその仕草はなんとなく弘子さんによく似ていた。
知的で如才ない感じだ。
『達坊ーッ!!』
不意に甲高い声が奥から響き、白衣の女性が飛び出してきた。
長い黒髪をポニーテールに結び、ややケバい化粧をした若い女性だ。