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第28章 横山総合診療所

『ん？客人か？』

不意に奥の扉から男が顔を出した。
京子さんと同じく鼻筋が長く通った若い男性だ。

額にＣＤのようなアーカイブスをつけている。
それがキラキラ反射していた。

『え？…お客さんッ？見せて！見せて！』

弾けるような高い声が聞こえ、男性の脇から小柄な少女が飛び出してくる。

『駄目だッ！千秋ッ！』

男性の制止を振り切って少女は僕の前へと駆け寄ってきた。
栗色のお下げの少女だった。

彼女は長い睫毛に囲まれた大きな目を僕に向けた。
まるでしげしげと観察するかのように。

彼女が達弘さんが言っていた置き去りにされた奴奴の子供だろうか？

『あたし千秋、あなたは？』

まるで小さな鈴を鳴らすような可憐な声色で少女が問う。

『僕は田中信人、荒岩さんの家にお世話になっているんだよ。何年生かな？』

僕が答えると少女は両手をブラブラしながら答えた。

『千秋は小学校六年生だよ。来年中学生になるんだよ』

少女は少し誇らしげに言う。

『あんたがよそから来た奴か？』

白衣にアーカイブスをつけたどこからどう見ても医者の男性が近付いてきた。

彼はまるで漫画の悪役のように"ふんッ"と冷笑を浮かべている。
冷えた金属のように冷たい笑みだった。