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鬼ヶ瀬塚村
第28章 横山総合診療所
ピンク色のマニキュアが塗られた長い指先が1人の少年を指差す。

坊主頭に虫かごを抱き、泣きじゃくっている少年だ。

若干印刷の荒いセピアに近いその写真には、ただただその坊主頭の少年が写っているだけだった。

『これが達弘さん?』

『んふふ…ぞうだっぺよ。村一番ば泣き虫のガキんぼだったんだ』

京子さんは次のページを開く。
白いセーラー服をまとった京子さんらしき少女と、不貞腐れた表情を浮かべる少年がいる。

『こごばあたいが中2の夏休みだっだがら、あいづば少6だっぺな。くっそ生意気なぐぜに雷でションベン垂れる胆のぢいせぇガキだったわ』

『…人は変わるんですね…』

『ハハッんだっぺなぁ…ああ、この赤子が優子だな…あいづもオツムが足りでりゃ悪いガキんぼじゃねぇんだがな…軽度のよ障害があるっぺ…色々複雑なんだば』

京子さんが指差す写真には少女が生まれたての赤ん坊を抱いているものだった。

『抱いてるのは京子さんですか?』

『んだよ、昔ば髪短がっだがらな…んで、こげが真理子だ』

隣のやや大きめな写真、何かの集合写真なのか大人から子供まで寄り添うように写っている。

その上段隅に黒髪のショートカットの少女が膨れっ面でこちらを睨んでいた。
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