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鬼ヶ瀬塚村
第28章 横山総合診療所
紛れもなく真理子さんだった。
大きくて釣り上がった目に小振りで先の丸い鼻、薄く口角の上がった赤い唇。
まるで玉子のような輪郭に闇の様な黒髪…真理子さんだった。
『こげば正月だっぺな…確か政治家の端ぐれ…ほれ、今アメリガだどがキャナダ行っでる大臣の秘書が奴奴で来た時ばな…3000万ぐれぇ貰っだな…あんな偉ぐなるならもっとふっがげりゃよがっだ…こっちは一郎だな、あいづも昔がら何考えどるがわからんだんこじゃっだな』
真理子さんの隣に前髪を真っ直ぐ切り揃えられた少年が目蓋を閉じて写っていた。
シャッターとタイミングが合わなかったのだろう。
無残に目を閉じた笑顔で一郎さんは写っている。
『ほだっぺ、こげば吾郎のジジィだな』
指先の先には煙草を咥えまるで白黒映画に出てきそうな男性が写っていた。
見事な猪の亡骸を前に親指を立てている。
ハイカラな写真だ。
『達坊ばあたいど結婚ずると思っでだよ、それがあんなヒョロッコイ鎌研ぎ村の紗江ば結納しちゃうたぁね…やっでらんねぇっぺよ。まぁ、隣村の役立たずの三男坊が婿どんにはなってぐれだがねぇ』
京子さんはニシシシシッと白い歯を剥き出しにして笑う。
大きくて釣り上がった目に小振りで先の丸い鼻、薄く口角の上がった赤い唇。
まるで玉子のような輪郭に闇の様な黒髪…真理子さんだった。
『こげば正月だっぺな…確か政治家の端ぐれ…ほれ、今アメリガだどがキャナダ行っでる大臣の秘書が奴奴で来た時ばな…3000万ぐれぇ貰っだな…あんな偉ぐなるならもっとふっがげりゃよがっだ…こっちは一郎だな、あいづも昔がら何考えどるがわからんだんこじゃっだな』
真理子さんの隣に前髪を真っ直ぐ切り揃えられた少年が目蓋を閉じて写っていた。
シャッターとタイミングが合わなかったのだろう。
無残に目を閉じた笑顔で一郎さんは写っている。
『ほだっぺ、こげば吾郎のジジィだな』
指先の先には煙草を咥えまるで白黒映画に出てきそうな男性が写っていた。
見事な猪の亡骸を前に親指を立てている。
ハイカラな写真だ。
『達坊ばあたいど結婚ずると思っでだよ、それがあんなヒョロッコイ鎌研ぎ村の紗江ば結納しちゃうたぁね…やっでらんねぇっぺよ。まぁ、隣村の役立たずの三男坊が婿どんにはなってぐれだがねぇ』
京子さんはニシシシシッと白い歯を剥き出しにして笑う。