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鬼ヶ瀬塚村
第4章 荒岩一族との初対面
中にはぎっしりと様々な薬が詰まっていた。薬と言うよりは漢方と言った方がいいかもしれない。

何やら小瓶に液体やら軟膏やらが入っている。

そのうちの一つを吾郎さんは選びだし、大きくて分厚いシワシワの手で蓋を開けた。

『うッ…』

思わず僕は顔を背けた。
生臭い腐ったような異様な臭いが小瓶から立ち込めたのだ。

『大丈夫じゃで、ごれな近くの温泉の源泉でづくられた薬だべよ』

吾郎さんは細い綿棒を小瓶の中に滑り込ませ、何か得体の知れない色をしたそれを僕の目蓋に乗せた。

ヒヤッとしている。
確かに吾郎さんが言うように温泉特有の硫黄の香りだ。

『どうじゃ?』

吾郎さんが綿棒の先を僕の目蓋の上で動かしながら聞いた。

『なんだか冷たくて…でも、効きそうですね』

『あだりめぇよ!おめ、これでなんぼの怪我も治るんだがんねッ!?』

吾郎さんは自慢気に豪快に笑った。
数粒彼の唾が僕に飛んできた。

『どにかく真理子ちゃん…信人くんと客室でくつろいでげれ』

不意に一郎さんが静かに呟いた。

真理子さんは"はぁっ"と深い溜め息を漏らしてから

『わかったわよ。本当に田舎ってやぁね!…ノブ行こう?あたし編集室に電話したいし』
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