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鬼ヶ瀬塚村
第30章 鬼神祭
僕は太鼓の男衆達をチラッと一瞥した。
腕組みをし足をパタパタ動かしている。
相当苛立っているようだ。

『代わりのもんが指揮になっでも構わんがよ…鬼神様がどう思われるが…それがおっがねぇ』

男性は難しそうな顔をする。

『どりあえずー、火ぃ放ちましょうや』

男性の背後から松明を手にした男が言う。

『仕方ないっぺ…おうッ!放てッ!』

男性の声が終わった途端に辺りは一瞬で明るくなった。
パチパチと空気が弾ける音を鳴らしながら今日箱で捌いた死体が燃えてゆく。

あのバラバラの肢体と四肢が…今まさに鬼神様がいる天空へと旅立ち始めたのだ。

僕は苦痛に顔を歪めた。
あの炎の中に罪がある。
それは奴奴だけの罪じゃない、あの箱の光景を見た僕は思う。

あの中には僕らの罪もあるのだと。

不思議な事に早く燃えて消えてくれと思った。
次第に自身が村人になっていくのを感じた。

『ノブッ!優子ッ!』

背後から声がし、振り返ると吾郎さんと紗江さんがいた。

『達弘はおらんのが?あ゙?』

『はい…あいにくここにはいないようです』

紗江さんが舌打ちしながら地面に酒瓶を下ろす。

『何やっでんだ、あの馬鹿亭主…あたじらに恥かがせやがっで』
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