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鬼ヶ瀬塚村
第30章 鬼神祭
『姉ぢゃんは?』

優子が吾郎さんに問う。

『じきに来るっぺよ。奴奴も一緒じゃ、最期を見送りでぇんだどよ。一郎ば見回りだ。家のババァどもには先に飯食わせたっぺよ』

『じっぢゃん、オレ腹減っだよ~、肉ざ食いてぇ!』

優子が身をよじりながらごねると吾郎さんはいつものようにガッハッハッハッと笑い

『わじもじゃ、帰ぇっだらたらふく食え食えッ!今日はええ茄子が採れだぞッ!』

と言った。

『野菜は嫌だっぺよ、肉がええ~ッ!』

そうこうしているうちにボンボボン…ボンボボン…と軽く太鼓が鳴り始めた。
20~30代と思われる若い男達は達弘さんを待つのに耐え兼ねて太鼓を触り始めたのだ。

ボンボボン…ボンボボン…ボーン…ボーン…

胃袋に響く太鼓の太い音色。
僕は周りをキョロキョロした。
達弘さん、一体どうしたんだ?
横山先生の病院の帰りから様子がおかしかった。
探してもやはり居無い…。

『ハッ!!』

若い男が掛け声を上げた瞬間、不揃いだった太鼓の音がピタリと一つになった。

ドンドドンッ!ドーンッ!ドンドドンッ!ドーンッ!

みるみるうちに太鼓の男衆達は汗まみれになって行った。

やがて村人達がチラホラと火の周りで踊り始めた。
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