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第30章 鬼神祭

歌声や太鼓の音色に合わせて村人は踊る。
濃い影がユラユラと海藻のように蠢いていた。

『さぁで、ちぃどばがし飲むが』

吾郎さんは一升瓶と盃片手に酒を飲み始めた男達に混じっていった。

優子は火の側でクルクル嬉しそうに踊っている。

紗江さんは女達と男達に握り飯やいなり寿司を振る舞っていた。

探さなくちゃ。
僕は思った。

もしかしたらどこかで怪我をして動けないのかもしれない。

『これ、お借りしますッ！』

『お、おい…ッ！』

男性から懐中電灯を奪うようにして取り、僕は一目散に階段を駆け降りていった。

達弘さんッ？
一体どうしたって言うんだッ？

無事を祈りながら階段を下り、あてもないのに僕は無我夢中で彼を探した。

まさか野犬や猪に襲われたんじゃ…。

不安が過る。

『ノブッ？』

暗闇から声がし、僕はそちらに懐中電灯を向けた。
白衣にいつか見た緋袴姿の真理子さんが驚いた顔で僕を見ていた。

隣にはやつれた奴奴…野田がいた。

『慌てて何してるのよ？どこへ行くの？』

僕は息を整えながら答えた。

『…達弘さんが…まだ来てないんだッ…』

『えッ？達弘が？太鼓囃子はどうなってるのよ？』