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鬼ヶ瀬塚村
第30章 鬼神祭
まさか横山先生の診療所で不治の病を告白されて自棄になって…それ以上は想像したく無かった。

"せんせッ"と慣れ親しんでくれた達弘さん。
あんな可愛くないバニーちゃんに喜んでいた達弘さん。

僕は彼を友人と認めていたのだと感じた。

癌だとか白血病だとか不治の病を告知されたんじゃ無いだろうか?
達弘さんッ!
今、探しますッ!

僕は懸命に辺りに懐中電灯を照らして歩いた。

人影一つない。
街頭に照らされたアスファルトが永遠と闇に続くだけだ。

ボーン…ボーン…ボーン…

背後から太鼓囃子が聞こえる。
あの特有の臭いを上げながら煙が空へと立ち込めるのが見えた。

きっと達弘さんも煙が見える場所にいる筈だ。

牛蛙の鳴き声がする。
鈴虫とひぐらしが鳴いている。

稲穂がザワめき竹林もザァザァしなっている。

達弘さん…どこに居るんだ?

ふと、前方から懐中電灯の明かりが見えて来た。

達弘さんッ!?

僕はそれに向かって駆け寄った。

『眩しいっぺよぉ』

懐中電灯の光を手で遮るのは達弘さんではなく一郎さんだった。

『何じでるの信人ぐん?祭にば参加ぜんのが?』

『達弘さん…見掛けませんでしたか?』

『達弘ぐん…?いんや、僕は見でねげど…何があっだんが?』
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