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鬼ヶ瀬塚村
第30章 鬼神祭
『あなた方は僕を…僕の人生を認めてくれたんです…生きていても良いと…人を殺めても尚、生きる欲求に従って良いのだと…』

奴奴は途切れ途切れに、しかし確実に一言一言話す。

ワード一つ一つが固くて重いブロックのように僕の頭上に降ってくる。

『愚かですよね…刑務所に入って罪人と呼ばれるのを恐れて…逃げ出して…なのに…嬉しいんですから…』

『…そんな事…ないですよ。僕だって…罪は償いたくとも刑務所なんか行きたくない』

あまりに話題のレベルのベクトルが違い過ぎて、僕は月並みの言葉しか思い付かない。
けれど奴奴は満足そうに涙を流しながら微笑んでいた。

『どうせ会社はクビでしょう…何日有休を使った事か…これを機に海外にでも行ってみます。仕事なんて…死ぬ気で探せばいくらでもあるでしょう。こんな思いをしたんだ…僕なら大丈夫』

奴奴の言葉に僕はハッとした。
奴奴は…強くなっている。
とてつもなく前向きだ。
確実に成長している。

重荷を炎にくべた人間はこれ程までに強くなるのか。

僕の頬に知らないうちに涙が溢れた。

『スキューバダイビングが好きなんですよ…オーストラリアあたりにでも…行こうかな…なんて…ハハッ』
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