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鬼ヶ瀬塚村
第30章 鬼神祭
この強い衝撃、揺さぶられる心臓…僕は黙って奴奴の横顔を見ている他無かった…。

スッキリとした微笑みのまま、彼は真理子さんを見上げ続けている。

今、罪が、怒りが、悲しみが、不安が…炎の渦に吸い込まれていくのを感じた。

『おおッ!』

不意に周囲がざわめいた。
僕は涙を拭い、辺りを見渡す。
酒に酔った男達が中腰で手招きしているのが見えた。
彼らの視線の先には汗を大量に流した達弘さんの姿があった。

目は何故だかギラギラと鬼のように輝き、獲物に狙いを定めた狐のようだった。

淡い小豆色の着流しに黒帯で彼は立っていた。

少しただならぬ様子に村人一同、そして奴奴も固まっている。

太鼓は鳴り止み、真理子さんも直立不動で達弘さんを見つめていた。

『ずまねぇ、待だぜぢまっだな』

達弘さんはそう言うと額の汗を拭い太鼓の男達に近付いた。
なんだか達弘さんから甘いいい香りがした気がした。どこかで嗅ぎ覚えのある匂いだ。

『おいおい達坊ッ!なぁにしでだんだよッ!じょことおっぱじまっでだのがッ?』

太鼓の男が笑いながら言う。
達弘さんは"へへッ"と笑い太鼓のバチ棒を受け取った。

『達弘さん…これ…』

僕は彼に歩み寄った。
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