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鬼ヶ瀬塚村
第30章 鬼神祭
『ノブさん、すまねぇな一郎の野郎がら聞いだっぺよぉ、血相変えで俺のごど探しでぐれだんだっでなぁ?』

達弘さんは風呂敷からはっぴと捻り鉢巻きを取り出すと、それぞれを身に着けた。

『どこへ行ってたんです?みんな心配してたんですよ?』

村人も太鼓の男達も奴奴も真理子さんも達弘さんを心配して凝視していた。

『へへッぢいどばがじ牛舎で焼酎仰っでだらよ、寝ぢまっだっぺよ』

彼の言葉に村人達はどっと笑った。

『達坊らじいっぺよぉッ!』

『まぁ~だぐ、余計な心配かけやがっでよぉッ!』

『ほれぇッ!鳴らせッ!鳴らせッ!』

男達が歓声を上げると、達弘さんは一瞬目蓋を閉じた。
精神統一しているのだろう。

『ハッ!!やぁッ!!』

達弘さんが掛け声をあらげた。

ドンドドンッ!!ドンドドンッ!!ドーンッ!!ドーンッ!!ドンドンッ!!

先程の太鼓の音色とはうって変わった音だった。

まるで地鳴りのように辺りの一面の空気をビリビリ振動させる。

『ハッやぁッ!!』

達弘さんはまるで鬼瓦のような顔で太鼓を叩く。
太鼓が壊れてしまうんじゃないかと思う程…力強く。

何故だか何かを振り切るような鬼気迫る叩き方だった。
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