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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『じっがり歩げぇッ!ノブッ!』

『あははッ頑張れ~優子~』

優子に支えられながら僕は千鳥足足で荒岩家へと向かう。

前後にも同じように千鳥足の村人が幾人か見えた。
すれ違いさまに若い男にいわれた。

『おめ良い飲みっぷりじゃっだな!今度ば太鼓やっでみないがッ?達坊に話じでおいでやるよッ!』

『ありがとうございますッ!』

なんだか少し認められたようで嬉しかった。

更には割烹着姿の若い女も

『踊りも可愛がっだっぺよぉ、まぁだよろじぐなッ!』

と、笑顔を見せてくれた。

村の一部になりつつあるのだと実感した。

村人達は上機嫌のままそれぞれの帰路についてゆく。
手にした懐中電灯がまるでホタルの列のようだった。

ああ、気分がいい。
僕は心地よさに身を任せて優子にもたれかかった。

優子はブツブツ文句を言っていたが、僕を引きずるようにして荒岩家へと帰してくれた。

玄関先で思いっきりトランクスをはみ出しながら僕は仰向けに倒れこんだ。

『はよぉ上がれや酔っぱらいめッ!』

優子が懸命に僕を引っ張る。
ようやく僕は這うようにして居間のちゃぶ台に突伏した。

『水持っでぎてやるよ』

優子が調理場へと駆けてゆく。
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