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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
続いて紗江さんと吾郎さんが雪崩れ込むように居間に入る。

『じっぢゃん重てぇ重てぇ』

紗江さんは右肩を左手で揉みながら座った。
吾郎さんは後ろで大の字になりイビキをかいている。

『だらじねぇだんこばっかじゃ…晩飯は素麺だがんねッ!』

紗江さんはピシャリと言って調理場の暖簾を潜った。

『なぁ…ノブよぉ』

背後で吾郎さんが僕の名前を呼んだ。
振り向くと、彼は顔を真っ赤にして仰向けのまま僕を見上げていた。

『どうじゃ?あれが鬼神祭だっぺよ…ただの祭りじゃねぇ…深いもんが…むがーじがら続いでるんじゃば…』

『………』

『妙な仕事だどおめは思うがもじんねぇ、だげんどよ…あの奴奴はどう足掻いてもじょこを殺す運命じゃった…』

『吾郎さんにはわかるんですか?』

『無駄に長生きしでねぇよ、このクソガキがぁ…わがるんだよ、オラぁよ…あの糞真面目な奴奴にはそれじが選択がながっだだけじゃ…まぁ…死にかけのジジィの戯れ言だげんどな、へへッ』

吾郎さんは胸で大きく呼吸しながらそう言った。

『なんが感じだろ?奴奴に会っでよ?あ?』

僕は力強く頷いた。

『はい…言葉で表現するのは難しいけれど…世の中無駄な事はないんですね。奴奴にとっては大きな意味があったと思います』
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