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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『宗二さんは今どうしてるの?』

『楼閣って呼ばれる特殊な鍵付の座敷にいるわ。頭を丸めて、ヒゲも剃って…猪の面を手入れしていたわ。とても誇らしげにしていたわよ』

『…そうなんだ』

『ええ、一部の村人はお父さんを責めてるみたいだけれど…大半の村人はお母さんに対する愛情への行動に肯定的よ』

『よかった…』

『うん、だから聖狩りも軽い感じで終わるはずよ?後はいっちゃん頼みね』

真理子さんは少し照れ臭そうにニヤニヤ笑った。

僕も本当にひと安心した。
きっと一郎さんの事だ、うまくいくに決まっている。

けれど────

その晩、期待の一郎さんは荒岩家に帰ってくる事はなかった。

翌朝早朝、まだ5時にも満たない時間…荒岩家の玄関を激しく叩く者がいた。

けたたましい音に僕は目が覚める。

『村長ぉッ!!大変だっぺぇッ!!来てくだせぇッ!!』

ドンドンドンッ!
ドンドンドンッ!

『真理子さん…誰か来たよ?』

『………うるさいなぁ…』

『真理子さんってば』

『…ノブ…出てよ…』

真理子さんは一度も目蓋を開ける事なくそうブツブツ言う。

仕方なく客室から出て玄関に向かうと吾郎さんが対応しているのが見えた。
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