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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
真理子さんの目は真っ赤に充血し、今尚大粒の涙をポロポロと溢していた。
マスカラやアイシャドウがにじみ、まるで試合後のボクサーみたいだ。
『急にどうしたの?』
つとめて優しく尋ねると真理子さんは鼻水をズルズルすすりながら
『な゙んでも゙ない゙ッ!』
と鞄を掴み寄せ、中からティッシュを取り出して鼻をかんだ。
『なんでもない事ないでしょ?ねぇ、さっき一郎さんとどんな事話してたの?』
『………』
やっぱりか。
『僕には教えられないの?おかしくない?』
『…ッ!うるさいなぁ!!ほっといてよ!!』
『なんだよ…』
『あっち行って!!』
いい年して子供みたいに真理子さんは手足をばたつかせて叫んだ。
こうなってしまっては彼女が冷静になるまでほっておくしかない。
いつもの事だ。
『はいはい、わかったよ…少しその辺りを散歩してくる』
僕は立ち上がり障子を開けようと手を伸ばした。そしてハッとして手を空中で止めた…。
障子と指先の間には20cm程の空間がある。その20cmの先、障子の先に誰かがいた。何かが動いているのがわかった。
『ノブ…』
不意に背後で真理子さんが僕の名前を呼んだ。
マスカラやアイシャドウがにじみ、まるで試合後のボクサーみたいだ。
『急にどうしたの?』
つとめて優しく尋ねると真理子さんは鼻水をズルズルすすりながら
『な゙んでも゙ない゙ッ!』
と鞄を掴み寄せ、中からティッシュを取り出して鼻をかんだ。
『なんでもない事ないでしょ?ねぇ、さっき一郎さんとどんな事話してたの?』
『………』
やっぱりか。
『僕には教えられないの?おかしくない?』
『…ッ!うるさいなぁ!!ほっといてよ!!』
『なんだよ…』
『あっち行って!!』
いい年して子供みたいに真理子さんは手足をばたつかせて叫んだ。
こうなってしまっては彼女が冷静になるまでほっておくしかない。
いつもの事だ。
『はいはい、わかったよ…少しその辺りを散歩してくる』
僕は立ち上がり障子を開けようと手を伸ばした。そしてハッとして手を空中で止めた…。
障子と指先の間には20cm程の空間がある。その20cmの先、障子の先に誰かがいた。何かが動いているのがわかった。
『ノブ…』
不意に背後で真理子さんが僕の名前を呼んだ。