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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『真理子ぢゃん…』

洋ちゃんと呼ばれた村人は顔を歪めた。
とても辛そうだった。
そして僕は放心状態だった。

『おじぃちゃんどうしたのよ?ノブも黙りこんじゃって…2人とも変よ?』

『真理子ぢゃん…実は…』

『一郎ば死んだ…』

洋ちゃんが言う前に吾郎さんがポツリと言った。

その一言の後、恐ろしい程長い沈黙が訪れた。
まるで竹林のざわめきも、力一杯鳴きわめく蝉も気を使っているんじゃ?と思う程静かな沈黙だった。

ドタッと固くて鈍い音がした。
僕は隣を見下ろす。
真理子さんがへたりこんでいた。
無表情のまま涙をポロポロと溢している。

『ど…どにがぐよ…横山先生んどごば来でぐれんが?先生らも待っでるんだばよ』

洋ちゃんは悲しそうにそう言った。

一郎さんが…死んだ?
昨日まであれだけ元気だったじゃ無いか?
休みだからと僕に村を案内してくれて…
ビビ介とキキ子を紹介してくれたじゃ無いか…
それから…それから…一緒に奴奴のワゴンを掃除して………鬼神祭を抜け出した僕に優しく忠告していた彼は…もう…この世に…居ないと言うのか?

"少なぐども僕は信人ぐんば殺さねぇっぺよ"

"こげな顔ばじでぇ…よっぽど怖がっだんだな"

彼の優しい言葉が脳内でリピートされる。
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