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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『交番のかっちゃんには言うだんが?』

『いや、言ったところで交番は機能し無いだろう』

『兄さん、どうするの?』

『死因は切腹で決まりだろ…』

『あの…』

兄弟達が言い合う中、真理子さんが申し訳なさそうに言った。

一斉に彼らの額のアーカイブスがこちらに向けられる。
CDみたいなそれは光をピカピカと反射させていた。

『どじだんだ?真理ぢゃん?』

『とにかく…一度…彼を家に連れて帰れないですか?死因は自殺なんですよね?』

『まだそうと決まったわけじゃねぇが…』

『お願いです…彼を家に帰して?』

真理子さんは嗚咽を漏らしながら彼らに訴えた。
僕は無意識に彼女の手を握っていた。

『夜まで待っでぐれんが?まだ自殺と断定はでぎねぇっぺよ。他殺や事故死もありうるがんな』

英典さんが言うと真理子さんは力なく俯いた。

『わがっだら夜電話するっぺよぉ、どにがく帰っで休め?な?』

『わかり…ました…』

真理子さんは渋々引き下がると診察室を後にした。

待合室では吾郎さんがまだ放心状態で長椅子に座っていた。
京子さんがとても心配そうにしている。

『京子、一度私達は帰るわ。死因が特定できたらすぐ電話して…これ、私の携帯電話の番号よ』
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