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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『そじだらよ、軒先で典子がしゃがみこんで震えでた。訳を聞いだら、紗江とおっぢゃんが手ぇば繋いで竹林に入っで行ぐのが見えで…あどをづげだら………2人ども裸だっだっで言うんだ』

カヤさんが芋虫のように蠢いた。

『俺ざ牛舎の竹刀を持っで2人のどごへ行っだ。じだらもう事ば済んどるみたいじゃった…だけんど、俺は紗江の側におっだ男の肩目掛けて竹刀を振り下ろじだんじゃ…男の顔ばわがらんがっだ…典子が嘘を言っでるようにも俺には思えながっだ…』

『その時、紗江さんはどう言っていたの?』

弘子さんが落ち着いた様子で言う。

『あいづは、顔のわがんねぇ男に乱暴ざれだっで泣いどっだ…俺は紗江を信じた…典子ば疑っだ…本当に馬鹿だった…』

達弘さんは煙草の煙を天井に吐き出すと更に続けた。

『おっちゃんと風呂に入る機会があったんだっぺよ…そじだらよ…へへッ見事に竹刀の傷痕があったんじゃ』

『だからって…和幸がいっちゃんの子供とは限らないじゃない!怪我もたまたまかもしれないじゃない!』

真理子さんがちゃぶ台を叩きながら言う。

『俺だっでよ、そう思いだがっだ…いや、そう思う努力ばしだんだ…だげんどよ…』

達弘さんは静かにみんなを見渡した。
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