この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
僕が玄関で靴を履いていると、後ろから吾郎さんが
『でがげんのが?』
と団扇をパタパタ扇ぎながら言って来た。
『ええ、少し辺りを散策してみようかと…』
吾郎さんは一瞬目を細めた。
『じゃあ、わじも行ぐば』
吾郎さんは泥がついた下駄を履きだした。
鼻緒部分が随分い傷んだやつだ。
『いえ、大丈夫ですよ!少し家の周りをまわる程度ですから!』
僕は前をゆく腰を丸めながらも大股で歩く吾郎さんに言った。
『わじも行ぐつうだら行ぐんじゃ!』
吾郎さんはピシャリと言ってズンズン歩いていく。
真理子さんから吾郎さんは78歳になると聞いていたが、随分動きが機敏だ。
僕の祖父はもう4年前に他界しているが、彼のようにはつらつとした老後を送っていた印象はない。
いつもやつれていて、呼吸すら辛そうだった。
祖父に話しかけても、祖父は返事どころか僕の姿すら見ようとしなかった。
彼はボケずに逝ったけど、祖母は今神奈川の藤沢で施設暮らしだ。
僕はそんな事を思いながら吾郎さんの後をついて行くように歩みを進めた。
吾郎さんは僕なんかに気にも止めずどんどん歩いていく。
なんとなくデート中の真理子さんと似ていた。
『でがげんのが?』
と団扇をパタパタ扇ぎながら言って来た。
『ええ、少し辺りを散策してみようかと…』
吾郎さんは一瞬目を細めた。
『じゃあ、わじも行ぐば』
吾郎さんは泥がついた下駄を履きだした。
鼻緒部分が随分い傷んだやつだ。
『いえ、大丈夫ですよ!少し家の周りをまわる程度ですから!』
僕は前をゆく腰を丸めながらも大股で歩く吾郎さんに言った。
『わじも行ぐつうだら行ぐんじゃ!』
吾郎さんはピシャリと言ってズンズン歩いていく。
真理子さんから吾郎さんは78歳になると聞いていたが、随分動きが機敏だ。
僕の祖父はもう4年前に他界しているが、彼のようにはつらつとした老後を送っていた印象はない。
いつもやつれていて、呼吸すら辛そうだった。
祖父に話しかけても、祖父は返事どころか僕の姿すら見ようとしなかった。
彼はボケずに逝ったけど、祖母は今神奈川の藤沢で施設暮らしだ。
僕はそんな事を思いながら吾郎さんの後をついて行くように歩みを進めた。
吾郎さんは僕なんかに気にも止めずどんどん歩いていく。
なんとなくデート中の真理子さんと似ていた。