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第31章 一人だけ居無くなる

『けれど、この中に咎めを受けていただなければならない人物が1人います』

弘子さんは周りを見渡し、そして鬼の形相で紗江さんを睨み付けた。

『紗江さん…残念ね、あなたには辛い咎めを受けて貰うわ』

紗江さんは訳がわかってい無い様子で、しばらく弘子さんをジッと見つめていたが、ジワジワとようやく恐怖が込み上げて来たのか口をパクパクさせながら首を左右に振った。

『な…なんで…なででずが？お義母さん…冗談ばきついでずよぉ』

紗江さんは引きつった笑みを浮かべ、僕らの感心を誘おうと首をキョロキョロ動かす。

『本当に残念だわ。あなたは若いし、まだまだ子宝に恵まれそうだったのに…』

『お…お義母さん…？』

『お義母さん？私はあなたにとっては義姉じゃなくて？』

弘子さんは冷たく言い放った。
そこでようやく紗江さんもこれが冗談ではないと勘づいた様子だった。

『あ…あれは…違うっぺッ！！ご…ご…強姦だッ！』

紗江さんは額に汗を光らせながら叫んだ。
けれど、誰1人として彼女を擁護する者は居無かった。
ましてや僕は無精子症だと告げられた直後の達弘さんを目の当たりにしたのだから、紗江さんの言葉を信じる義理は無い。