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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『家長を馬鹿にするような真似はおよしなさいッ!そしてあなたは一郎を侮辱するのですかッ?』

思わずビックリするほどの大きな声を弘子さんは上げた。

『あなたは自身がした事を理解しているのですか?』

弘子さんは続けた。

『せいぜい察しはつきます。あなたは17歳の時に赤神の儀の時にわざと一郎と組むように細工をしましたね?私は知っていたのですよ、あの公民館で発表された赤神の男女の組み合わせが意図的に変えられたと…あなたは昔からうんと昔から一郎だけが好きだった…違いますか?一郎によって女にして貰いたかったのでしょう?』

弘子さんの言葉に紗江さんは顔を赤くして震えていた。
目を上げる事すら怖いのだろう、彼女はちゃぶ台の木目に目線を這わせていた。

『そしてあなたは一郎に想いを告げられないまま荒岩家に嫁いだ…見ているだけで最初は満足だったのでしょうね、けれど一度惚れた男によって女にされた身体は正直だわ…あなたは一郎と人目を忍んでは逢い引きしていた…誰にも知られずにね、違うかしら?』

『そ…そ…そげな…憶測じゃッ!あたじは達弘の妻じゃッ!達弘一筋じゃッ!一郎なんざどにも思っでねぇっぺよッ!』

『あら、じゃあ…おかしいわね…』
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