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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『知っどるがッ?こやっちゃの親は商売女ぞッ!!男どもに嘘つく商売じゃ、そげな女の娘じゃ、こやっちゃもその血ば継いでホラ吹きじゃッ!!』

ガタッ
ちゃぶ台が一瞬揺れた。
次の瞬間、紗江さんは思い切り後ろに倒れこんだ。

頬を押さえて驚いた顔をしている。
何が起こったのか理解していないようだった。
開いた脚からは無残にもくたびれた下着が覗いていた。

『典子の母親を悪ぐ言うでねぇッ!!もう一発殴られでぇがッ!?あ゙ッ!?』

吾郎さんが涙をボロボロと流しながら、顔のすぐ横で握りこぶしを浮かべていた。
そうだ、典子ちゃんの両親は吾郎さんの知り合いなのだ。
友人を馬鹿にされ、立腹するのは当然だ。

『紗江さん、座りなさい』

弘子さんが静かに言う。

『お父さんも、どうか堪えてちょうだい?』

弘子さんに言われて、吾郎さんは渋々と正座し直した。
紗江さんは吾郎さんを睨みながら座り直す。
しかし、不貞腐れて片膝を立てている。

『典子さんは嘘つきではありません』

弘子さんが言う。
典子ちゃんは少し安堵したような驚いた顔で弘子さんを見上げた。

弘子さんは続ける。

『嘘つきはあなたですよ、紗江さん』
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