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鬼ヶ瀬塚村
第31章 一人だけ居無くなる
『さて、紗江さんのお咎めを決める前に質問があるの』
弘子さんは顔面蒼白の紗江さんに言う。
『その…言いにくいのだけれど…一郎とは互いに愛し合っていたの?それとも彼は欲望だけ?』
『………』
『答えなさい、紗江さん』
『一郎ば…わたじを…世界一めんごいじょこだと………愛じどるっでいづも言うでぐれまじだ…』
その彼女の言葉に達弘さんが"ハハッ…はぁ…"と体重を後ろにかけて姿勢を崩した。
彼の頬に大粒の涙が溢れ落ちる。
僕は一郎さんの言葉を思い出す。
"昔は好きなじょこもおりまじたわ。けんど、実らんもんでずわなぁ"
"隣の村の可愛いじょこでしてね。今は嫁いで元気にやっでる聞きましたわ"
隣の村…紗江さんは鎌研ぎ村出身だ。
あれは…紗江さんの事だったんだ。
淡い恋心を子供ながらに抱いた紗江さん、大人の男性である一郎さんがどうしようもなく魅力的に見えたのだろう。
だからいつも荒岩家に遊びに来ていたのは達弘さんに会う為じゃない…一郎さんに、彼に会うために来ていたのだ。
そして子作りを学ぶ村の習慣である赤神の際に彼女はくじ引きに細工した。
一郎さんに最初を捧げる為に。
けれど最後まで想いは告げられず、恐らくは幼馴染みだった達弘さんが紗江さんにプロポーズしたのだろう。
弘子さんは顔面蒼白の紗江さんに言う。
『その…言いにくいのだけれど…一郎とは互いに愛し合っていたの?それとも彼は欲望だけ?』
『………』
『答えなさい、紗江さん』
『一郎ば…わたじを…世界一めんごいじょこだと………愛じどるっでいづも言うでぐれまじだ…』
その彼女の言葉に達弘さんが"ハハッ…はぁ…"と体重を後ろにかけて姿勢を崩した。
彼の頬に大粒の涙が溢れ落ちる。
僕は一郎さんの言葉を思い出す。
"昔は好きなじょこもおりまじたわ。けんど、実らんもんでずわなぁ"
"隣の村の可愛いじょこでしてね。今は嫁いで元気にやっでる聞きましたわ"
隣の村…紗江さんは鎌研ぎ村出身だ。
あれは…紗江さんの事だったんだ。
淡い恋心を子供ながらに抱いた紗江さん、大人の男性である一郎さんがどうしようもなく魅力的に見えたのだろう。
だからいつも荒岩家に遊びに来ていたのは達弘さんに会う為じゃない…一郎さんに、彼に会うために来ていたのだ。
そして子作りを学ぶ村の習慣である赤神の際に彼女はくじ引きに細工した。
一郎さんに最初を捧げる為に。
けれど最後まで想いは告げられず、恐らくは幼馴染みだった達弘さんが紗江さんにプロポーズしたのだろう。