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鬼ヶ瀬塚村
第32章 二人だけいなくなる
古ぼけた校舎がやがて見えてきた。
緑色の鉄線に囲まれた校庭には誰もおらず、シーソーや砂場、滑り台など懐かしい物がカラフルな色で並んでいた。
田舎だけあって広く、すみには小さな菜園があった。
自転車から降り、僕は開け放たれた校門へ向かった。
門は赤く錆び、小さな蟻がうごめいている。
"鬼神天孤小学校・中学校"と大理石らしき黒々とした石板に刻まれている。
僕は辺りを見渡しながら校庭を歩きだした。
高くなった日の光がジリジリと首筋に痛い。
ふと目を凝らすと、ブランコを誰かがこいでいるのが見えた。
キィ………キィ………
と、まるで野鳥の声のような音を立てている。
『達弘さん…』
そこには項垂れてブランコに座る達弘さんの姿があった。
前後に軽く長い足を動かし、祈るように組んだ手に額を当ててジッとしていた。
ちょうどいい日陰の下、彼は孤独と戦っているようだった。
僕はそっと彼に近付く。
一瞬達弘さんは顔を上げたが、再び手の中へと額を埋めた。
僕は達弘さんから2つ離れたブランコに座った。
鉄のニオイが懐かしい。
昔はなんでこんな単純な物に夢中になったのだろう。
『誰に言われで来たんじゃ?』
達弘さんが静かに呟いた。
緑色の鉄線に囲まれた校庭には誰もおらず、シーソーや砂場、滑り台など懐かしい物がカラフルな色で並んでいた。
田舎だけあって広く、すみには小さな菜園があった。
自転車から降り、僕は開け放たれた校門へ向かった。
門は赤く錆び、小さな蟻がうごめいている。
"鬼神天孤小学校・中学校"と大理石らしき黒々とした石板に刻まれている。
僕は辺りを見渡しながら校庭を歩きだした。
高くなった日の光がジリジリと首筋に痛い。
ふと目を凝らすと、ブランコを誰かがこいでいるのが見えた。
キィ………キィ………
と、まるで野鳥の声のような音を立てている。
『達弘さん…』
そこには項垂れてブランコに座る達弘さんの姿があった。
前後に軽く長い足を動かし、祈るように組んだ手に額を当ててジッとしていた。
ちょうどいい日陰の下、彼は孤独と戦っているようだった。
僕はそっと彼に近付く。
一瞬達弘さんは顔を上げたが、再び手の中へと額を埋めた。
僕は達弘さんから2つ離れたブランコに座った。
鉄のニオイが懐かしい。
昔はなんでこんな単純な物に夢中になったのだろう。
『誰に言われで来たんじゃ?』
達弘さんが静かに呟いた。