この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
鬼ヶ瀬塚村
第32章 二人だけいなくなる
『たまたま散歩していただけですよ』
僕は嘘をつく。
達弘さんは"ハハッ"と笑いようやく顔を上げた。
まるで皮膚病にかかった狐のような顔だった。
目の周りがパンパンに腫れて充血し、目蓋は質量を含んでいる様子だった。
『なぁ、せんせ…』
『なんです?』
達弘さんはニッカパンツのポケットから煙草を取り出す。
そして口に咥え、しばらくしてから先に火を着けた。
辺りにニコチンが焼けるニオイが漂った。
『俺よ、さっきな…一つだけ嘘ばづいだんだ』
『………』
『最初がらよ、紗江ば俺を好いどらんど知っでだんだ…さっき居間では"好いで好がれで"って…オラぁ言ったけんどよ…紗江は…あいづの目に一度だっで俺が映っだごどはねぇ』
『………』
『17の青くせぇガキんぼの時によ、意を決して13歳だった紗江に"オラのスケになっでぐれッ!"っで…言うだんだ…』
『………』
『あいづはよ、癖のある顔付きだげんど…よぉぐ見ると可愛ええんだ…』
『………』
『んでよ、あいづの実家はよ、あいづの赤神をあいづが17の時っで決めでだらじいんだ…俺はよ15で済ませちまっでだがらよ…そりゃあ辛抱強く4年待ったっぺよ。接吻すらせんなんだ…我慢しどっだ』
僕は嘘をつく。
達弘さんは"ハハッ"と笑いようやく顔を上げた。
まるで皮膚病にかかった狐のような顔だった。
目の周りがパンパンに腫れて充血し、目蓋は質量を含んでいる様子だった。
『なぁ、せんせ…』
『なんです?』
達弘さんはニッカパンツのポケットから煙草を取り出す。
そして口に咥え、しばらくしてから先に火を着けた。
辺りにニコチンが焼けるニオイが漂った。
『俺よ、さっきな…一つだけ嘘ばづいだんだ』
『………』
『最初がらよ、紗江ば俺を好いどらんど知っでだんだ…さっき居間では"好いで好がれで"って…オラぁ言ったけんどよ…紗江は…あいづの目に一度だっで俺が映っだごどはねぇ』
『………』
『17の青くせぇガキんぼの時によ、意を決して13歳だった紗江に"オラのスケになっでぐれッ!"っで…言うだんだ…』
『………』
『あいづはよ、癖のある顔付きだげんど…よぉぐ見ると可愛ええんだ…』
『………』
『んでよ、あいづの実家はよ、あいづの赤神をあいづが17の時っで決めでだらじいんだ…俺はよ15で済ませちまっでだがらよ…そりゃあ辛抱強く4年待ったっぺよ。接吻すらせんなんだ…我慢しどっだ』