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鬼ヶ瀬塚村
第32章 二人だけいなくなる
『紗江さんが…怖かったんですね』
僕はポツリともらした。
弘子さんから達弘さんの話を聞くだけでいいと言われていたのに、ほとんど無意識で…呟いたのだ。
『せんせッ…わがっでぐれるが?』
キィ…とブランコが軋む音がする。
達弘さんはブランコからぶら下がる鎖を握り絞めながら僕を見つめてきた。
子犬の顔だ。
『…わかりますよ』
僕は静かに頷いた。
途端に達弘さんの切れ長の両目から涙があふれてきた。
堪えていたのだろうか、粘着性はなく水分を重量にして地面へと落下していく。
『そうだ、オラぁ怖かったんだッ!』
『紗江さんに嫌われたくなかったんですね』
『そうだッ!』
『だけど、疑う気持ちの不安を持て余して彼女に冷たくする他なかった』
『そうだッ!そうだッ!』
『傷付くのが怖かったから、触れられるのが怖かったから、冷たくして逃げていた』
『んだよッ!』
『自分からそんな風になったくせに仲が冷めてきたのを彼女のせいだけにした』
『その通りだッ!!』
達弘さんはまるで遠吠えのように泣いた。
彼は僕と同じなのだ。
深く愛しすぎて完璧過ぎる自分しか見せたくない。
弱味や弱音を見せれば離れていくんじゃないかと不安に束縛されていたのだ。
僕はポツリともらした。
弘子さんから達弘さんの話を聞くだけでいいと言われていたのに、ほとんど無意識で…呟いたのだ。
『せんせッ…わがっでぐれるが?』
キィ…とブランコが軋む音がする。
達弘さんはブランコからぶら下がる鎖を握り絞めながら僕を見つめてきた。
子犬の顔だ。
『…わかりますよ』
僕は静かに頷いた。
途端に達弘さんの切れ長の両目から涙があふれてきた。
堪えていたのだろうか、粘着性はなく水分を重量にして地面へと落下していく。
『そうだ、オラぁ怖かったんだッ!』
『紗江さんに嫌われたくなかったんですね』
『そうだッ!』
『だけど、疑う気持ちの不安を持て余して彼女に冷たくする他なかった』
『そうだッ!そうだッ!』
『傷付くのが怖かったから、触れられるのが怖かったから、冷たくして逃げていた』
『んだよッ!』
『自分からそんな風になったくせに仲が冷めてきたのを彼女のせいだけにした』
『その通りだッ!!』
達弘さんはまるで遠吠えのように泣いた。
彼は僕と同じなのだ。
深く愛しすぎて完璧過ぎる自分しか見せたくない。
弱味や弱音を見せれば離れていくんじゃないかと不安に束縛されていたのだ。