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鬼ヶ瀬塚村
第33章 恋
『例えばワサビ入りのガムと普通のガムがあるとする。僕はワサビ入りを食べる、真理子さんは普通のガムを食べる。僕は決してワサビが入っていたとは喚かない。彼女のように美味しそうに食べるんだ。同じだね、一緒だねって笑いながら食べるんだ。僕だけが辛い思いをしても構わないんだ。嫌われたくないから。彼女を襲う恐怖や不安を払い退けれなくとも、それを恐れる彼女の気持ちを想像して共感して分かち合いたい。同じ気持ちになりたいんだ。少しでも真理子さんが安心するように。いくら冷たくされても僕はまず最初に自分の非を疑うんだ。朝起きて挨拶はしたかな?少し不機嫌そうに見えたかなって?僕を嫌いだっていう負の感情を美しい彼女の心の中に芽生えさせたくないんだ。全ての悪は僕が背負いたい。僕だけで消化したい。真理子さんには普段通り暮らして欲しいんだ。陰で僕が泣いていようが怒っていようが、それは僕の感情であって恋には関係ない、そう、真理子さんには何ら関係ないんだ。痛みは僕が幸せは真理子さんが感じていれば僕達はうまくいくんだ…けど、真理子さんも同じだったみたいだ』

僕は達弘さんに顔を上げて照れ笑いした。
達弘さんは真剣な眼差しで僕を見ていた。
何か変な事、言ったかな?
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