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鬼ヶ瀬塚村
第33章 恋
『何か?』

僕がまじまじと達弘さんの顔を見つめると、達弘さんは嬉しそうにニヤニヤ笑った。
目を糸のように細め、黒目はシジミみたいだ。

『姉ぢゃんはええだんこを見つげたなって思っでよ。んな事真顔で言う野郎初めてだっぺ』

『そうですか?』

『んだともよ、もっど聞かせてぐれ』

『そうですね…』

『………』

『変な話かもしれませんが、僕は達弘さんと真理子さんの魂が入れ変わっちゃっても真理子さんが変わらず好きなんです』

『俺が姉ちゃんの身体になるっでか?』

『はい、というか…牛舎の太郎や花子になっても、僕には真理子さんなんですよ。魂レベルで彼女が好きなんです』

『なんづーか…仏教的ど言うが…流石せんせだな…』

達弘さんは頷きながら興味深そうに僕の顔を覗き込んでくる。

『達弘さんも、そうだったんじゃないですか?紗江さんに対して』

『オラぁ、魂だどが肉体がどうだがはわかんねが…紗江がどうしようもねぇしわくちゃババァになっても一緒にいたかたっぺよ、だから結婚したんだがら』

『同じ事ですよ。達弘さんは疑念という不安に1人で戦っていた…痛みは自分で充分だと最初は考えていたんでしょう?違いますか?』
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