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鬼ヶ瀬塚村
第33章 恋
『なんじゃ…おぉ…達弘が。最近見なんだな…』
暖簾を掻き分けて出て来たのは50代半ばと思しき男性だった。
まるで牛乳の瓶の底のような分厚い眼鏡をかけ、鼻の下には大きなホクロが目立つ。
『おっちゃんじゃねが?仕事休みなのが?』
『早朝にべこどんの乳さあづめで、さっきまで蚕の糸ばといどっだ…おんや?そぢらの奴は…噂の江戸の人がい?』
男性は暖簾を潜り抜け、くすんだサンダルを掃き僕を見上げる。
とても小柄だが筋肉質な人だった。
『オラぁ、ここの三男坊の助三いいまずんだわ、あんだは?』
『初めまして。田中と言います。お世話になります』
『オラぁ世話焼きじゃねがらなぁ…ハハッまぁええが、ほれ座れ座れ』
助三さんは木製の椅子を僕の前に立てた。
よく小学校の理科室や家庭科室で見た背もたれの無いシンプルなやつだ。
少しヤニで表面がネバネバしている。
『助三ざんよ、ばっちゃんばどうじでんだ?逝っちまったのが?』
『まぁだしぶとく生きどるわ…父ぢゃんが去年ポックリ逝ってがらは…ちぃとばがし元気はねぇがな』
『そうが…顔見れねが?』
『奥で寝たきりじゃ、もてなしはでぎんが会いてぇなら勝手に上がれ。こげな色男2人みだら喜ぶじゃばな』
暖簾を掻き分けて出て来たのは50代半ばと思しき男性だった。
まるで牛乳の瓶の底のような分厚い眼鏡をかけ、鼻の下には大きなホクロが目立つ。
『おっちゃんじゃねが?仕事休みなのが?』
『早朝にべこどんの乳さあづめで、さっきまで蚕の糸ばといどっだ…おんや?そぢらの奴は…噂の江戸の人がい?』
男性は暖簾を潜り抜け、くすんだサンダルを掃き僕を見上げる。
とても小柄だが筋肉質な人だった。
『オラぁ、ここの三男坊の助三いいまずんだわ、あんだは?』
『初めまして。田中と言います。お世話になります』
『オラぁ世話焼きじゃねがらなぁ…ハハッまぁええが、ほれ座れ座れ』
助三さんは木製の椅子を僕の前に立てた。
よく小学校の理科室や家庭科室で見た背もたれの無いシンプルなやつだ。
少しヤニで表面がネバネバしている。
『助三ざんよ、ばっちゃんばどうじでんだ?逝っちまったのが?』
『まぁだしぶとく生きどるわ…父ぢゃんが去年ポックリ逝ってがらは…ちぃとばがし元気はねぇがな』
『そうが…顔見れねが?』
『奥で寝たきりじゃ、もてなしはでぎんが会いてぇなら勝手に上がれ。こげな色男2人みだら喜ぶじゃばな』