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鬼ヶ瀬塚村
第33章 恋
『こっちじゃ、上がれ』
助三さんは暖簾を掻き分けて奥へと誘導する。
小さな居間だった。
四角いちゃぶ台に日めくりカレンダー、棚には大小様々な可愛らしいコケシとダルマが並んでいる。
日焼けしたオレンジ色の畳のすみに三毛猫が丸まっていた。
ただ、異質だったのが大型の液晶テレビと最新型であろう扇風機とエアコンだ。
あまりにも質素なその部屋では浮いている。
『この奥じゃ、茶ぁ持ってぐるがらよ勝手に入っどげ』
助三さんはそう言って居間から一段程下がった台所へと姿を消した。
『ババァ、入るぞ』
達弘さんがふすまを開ける。
中は薄暗く、半開きになった障子から辛うじて日の光が入っている程度だった。
六畳程の座敷中央に白い布団が敷かれ、薄くなった白髪頭が覗いていた。
『おいババァ、来てやっだぞ。達弘だ』
達弘さんが言うと掛け布団がモゾモゾ動き、ニュッとシワだらけの女性の顔が現れた。
女性は達弘さんの顔を見るととても嬉しそうに笑顔を浮かべた。
『達っちゃんじゃない…しばらくぶりだねぇ』
鬼ヶ瀬塚の訛りが一切ない横山診療所の奥さんである早苗さんのような言葉使いだった。
若干訛りのある弘子さんとは違う完全な標準語だ。
彼女も部外者だったのだろうか?
助三さんは暖簾を掻き分けて奥へと誘導する。
小さな居間だった。
四角いちゃぶ台に日めくりカレンダー、棚には大小様々な可愛らしいコケシとダルマが並んでいる。
日焼けしたオレンジ色の畳のすみに三毛猫が丸まっていた。
ただ、異質だったのが大型の液晶テレビと最新型であろう扇風機とエアコンだ。
あまりにも質素なその部屋では浮いている。
『この奥じゃ、茶ぁ持ってぐるがらよ勝手に入っどげ』
助三さんはそう言って居間から一段程下がった台所へと姿を消した。
『ババァ、入るぞ』
達弘さんがふすまを開ける。
中は薄暗く、半開きになった障子から辛うじて日の光が入っている程度だった。
六畳程の座敷中央に白い布団が敷かれ、薄くなった白髪頭が覗いていた。
『おいババァ、来てやっだぞ。達弘だ』
達弘さんが言うと掛け布団がモゾモゾ動き、ニュッとシワだらけの女性の顔が現れた。
女性は達弘さんの顔を見るととても嬉しそうに笑顔を浮かべた。
『達っちゃんじゃない…しばらくぶりだねぇ』
鬼ヶ瀬塚の訛りが一切ない横山診療所の奥さんである早苗さんのような言葉使いだった。
若干訛りのある弘子さんとは違う完全な標準語だ。
彼女も部外者だったのだろうか?