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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
ブリキの兵隊のような独特のゆがんだ歩みで吾朗さんは来た道を帰っていった。

『田中さん、苦労したでしょ?ここの人達の言葉や習慣だとかが独特だから』

『いえ…そんな…』

正直さっぱりわからずに苦痛を感じてはいたが、僕は無理矢理に苦笑いを浮かべた。

『少し歩きませんか?まだ日も高いですし、村を軽く案内致しますよ』

宗二さんはそう言って自転車から降りた。

『お疲れでしょう?大丈夫ですよ』

僕が言っても宗二さんは終始笑顔で"遠慮なさらず"と言わんばかりに手招きする。

『いいから、君にもこの風景をとどめて欲しいからね』

宗二さんはそう言った。

僕は宗二さんに並んで歩きだした。心臓が痛い程バクバクいっている。
高校生の頃、当時の恋人が僕を実家に連れこんだ時以上だ。やはり男親を意識すると、とても緊張する。

もっとちゃんとした時に彼とは会いたかった。

『東京はどちらから?』

宗二さんがキィキィと自転車を押しながら尋ねてきた。

『蔵前です』

『ああ、浅草に近くていいね』

彼はニコニコしながら言った。

『こんな田舎、初めてじゃないかい?ん?』
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