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第33章 恋

『家の前をウロウロしていると、仁助さんが当たり前の様に"お帰り、はよ飯ば作っでぐれ"と言ったんだ。私は泣いたよ。その晩初めて結ばれたさ…私は思ったもんだよ…人生ってやつには時間が限られとる。あんたら青二才にはまだわからないだろうけれど、時間は待ってくれないんだ。選択する余裕なんてないのだよ。粥の前で寿司を待ったって寿司は出ん、腹が空くだけだ…なら粥を食べる方が良い。皆贅沢なんだ、いい女が良い、良い男がいいと…目の前で愛してくれる人間を簡単に無視する。無視する程自分は立派なのかい？違うだろう、愛してくれる人が自分に評価を下してくれてるんだ。それを無下にする程殿様の奴はだいたい不幸になるねぇ。良い女ばっか追い掛けて、結局は最期まで独り身だった馬鹿たれもいたよ。誰にも知られず納屋でくたばっとったわ』

『へっ…結局は説教じゃねぇがよ』

『今を生きろ、あんたらは。時間は待ってくれないんだよ？愛されるうちが花だ、しわくちゃになりゃ誰も見向きなんてしてくれないんだからね。わかったか、達弘』

静江さんは意味深に達弘さんに告げた。

『さて、もう帰ってくれないか？話疲れちまったよ…それに今日は聖狩りだろ？用意しなくてどうする？』