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鬼ヶ瀬塚村
第34章 5人のマタギ
『覚悟は出来ているさ…村一番の名手である一郎くんが亡くなり、白湯はもう無い…鬼神様は私に試練をお与えになられたのだ。空腹で不安に駆られる醜い猪になれと、ね…だから、もう代わりの白湯はいら無いんだ』

僕は何も言葉が浮かばなかった。
神とは人が作りし存在じゃないのか?

その神が人間に試練を与えると言うのなら、それは人間が人間に試練を与える事じゃないか…人間の上に人間は本当の意味で立てるのか?

平等は皆無なのか?

神という名の衣をまとった極端な考え、文化レベルのモノが神の意向なら、試練を乗り越えた後に神は何をしてくれるんだ?

不偏がない神はただの鬼だ。

『どうして…そこまで鬼神様を祀るんですか?』

『そうだね、私も元々は部外者の身だ敬虔あらたかな信者ではないが…本当に鬼はいたんだよ、この村に』

『えッ?おとぎ話の鬼ですか?』

『ハハハ…いや、本当に存在したんだよ。真理子に頼んで弘子の部屋の文献を読むといい。百冊近くはこの村の伝記があるはずだよ』

『百冊も…』

『村のルーツ、そして何故我々が鬼神を崇めるかがわかるはずだ。実に興味深い内容だよ、きっと気に入るはずさ』

『…読みます…必ず』

僕は頷いた。
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