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第5章 宗二

『本当に真理子が言っていた通りの人物だね』

宗二さんはそう言った。

『真理子さんが？』

『うんうん、とても真面目で優しい人だと以前言っていたよ』

『そうだったんですか』

顔がカアッと熱くなるのを感じた。
真理子さんがそんな風に僕を第三者に評価を聞かせているんて想像も出来なかった。

『じきに弘子も体調を良くするでしょう。大丈夫ですよ。妻とはもう会いましたか？』

『それが、一郎さんから夜に会うようにと言われたんです』

『夜に？』

『はい』

宗二さんは黙り込み1人で何か納得したのか

『帰りましょう』

と自転車を迂回させた。
訳がわからないまま僕は宗二さんについていく。

『日が暮れると野犬だとか出るんです』

『はあ…？危ないですね』

それっきり宗二さんは荒岩家の門まで口を開いてはくれなかった。
何か失礼があったのかと僕は喉仏をゴクリと鳴らした。

『あの…お義父さん』

鳥居が埋め込まれた門をくぐったあたりで僕は言った。

『お義父さん…あはは…まさかそんな風に男から呼ばれる日が来るとはね』

『あ…いや、すみません…荒岩さん』