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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
『いやいや責めているわけではないよ。娘のパートナーからそう呼ばれるのを待っていた時もあったのだから』

僕の額からザアッと滝のような汗が流れた。
いつかはこうして恋人の父親と対面する日があるのだろうとは思っていたが、いくら練習したり考えをまとめたとしても"父親"を目の前にすると湿気た花火のように何も彩えない。

『あ…あの…色々と…ご迷惑おかけします』

『何が迷惑だと思っているんだい?』

宗二さんは相変わらずニコニコしながら尋ねてくる。

『僕は…この村の言葉がわからないですし…それに…』

"僕はエロ漫画家で娘さんに養われないとならないくらい売れてないんです"
とは言えなかった。

『まぁ、この村は独特だからねぇ…秘密主義と言うか…都会とは別世界だと思った方が逆に楽だと思うよ?それに、言葉がわからなければ私が教えてあげますよ』

『そ、それは助かります…すみません』

『君は謝ってばかりだね、私の若い頃にそっくりだ』

そう言って宗二さんはまるで仏のような慈愛に満ちた優しい笑顔で頷いた。

『わからない言葉で気になるものはあるかな?』
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