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第5章 宗二

気になる言葉は沢山あるが、特に気になったのは優子ちゃんの言葉だった。

『"骨を貰う"…とは？』

宗二さんは一瞬動揺を見せた。
その優しかった目がジワジワと不安の色に歪んでいく。

『誰から聞いたのですか？』

『え…？』

『誰から聞いたのですか？お義父さんですか？真理子からですか？』

軽く聞いてはいけない言葉だったのだろうか。
まさかこんな反応をされるとは思わず僕はたじろいだ。

『誰からです？』

再び宗二さんが問う。優しい笑みはとうになく、彼もまた"村人"の目付きだった。

『ゆ…優子ちゃんです。村の入り口で待っててくれて………その時に彼女が…』

『優子がですか…』

宗二さんは"はぁッ"と溜め息をついた。

『田中さん…いや、信人くん。優子は今年18歳になるとは言え中身はまるきり幼稚園児みたいなもんなんだ。私が世間知らずに育ててしまったから…私の責任ではあるが…』

『あの…骨を貰うって………いい言葉ではないんですよね？』

"骨を貰う"ニュアンスだけでもなんだか不気味な言葉だ。

『"殺す"という意味ですよ』

宗二さんは戸惑う事なく静かに教えてくれた。

僕らの背後にある竹林がザアザアッと不安気に音を立てる。