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第5章 宗二

『殺す…？』

僕は言葉を口の中で理解しようと反芻した。

攻撃的で恐ろしいそれは、刺々しくて口内を切り裂くようだった。

『多目に見てやってください、何ぶん大人社会や常識から逸脱した娘なんです。可愛いとは言え、あの娘は独特の考えを持っています。恐らく妻の家の血が濃いのでしょう…信人くんを驚かせようと言っただけで悪気はないんです』

宗二さんは眉毛をハの字にして悲しそうに言った。

『あ…まぁ…そんなもんですよね、彼女、女子高生ですもんね』

僕の苦虫を奥歯で噛んだような曖昧な笑みを見て、宗二さんはまた深々と僕に頭を下げた。

『娘の無礼は親の責任です…本当にすみません』

『いえ…そんな気にしてませんよッ！』

宗二さんはゆっくりと頭を上げた。
その顔はまるで白黒映画で俳優が犯人が誰なのか推理する時のような複雑な表情に似ていた。
宗二さんは本当に整った俳優のような顔立ちだった。

『あの…荒岩さん、失礼だとは思うんですが…』

『荒岩さんだなんて呼ばないでくれ、好きなようにお義父さんと呼んでくれたら私も嬉しい』

『あ…えっと………じゃあお義父さん、真理子さんと僕の現住所知られていないのですか？』

『ん？何故だい』

『さっき"どこから来たのか"と…』

『ああ…ははッ…それはね…』