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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
『真理子はね、この村が嫌いなんですよ』
宗二さんは淡々と言う。
『田舎だから、不便だから、そんな風に子供の時からしょっちゅう言っていました…』
『はぁ…そうだったんですか』
『わかるでしょう?住んでいる場所を教えれば、好奇心旺盛な村人は押し寄せるように彼女に便りを出すでしょう。特に優子やお義父さんなんかは…中には直接会おうとする者もいるかもしれません』
『………嬉しい事なんじゃないんですか?』
宗二さんは首を大きく左右に振って否定した。
『あの娘にとっては苦痛他ならないのです。恐らくはこの村から離れた土地に鬼ヶ瀬塚の事を持ち込みたくはないのでしょう』
淡々とまるで当たり前に語る宗二さんに、なんだか僕は無性に違和感を感じた。
『何故真理子さんは…村を……?』
『ここにいれば確かに幸せに暮らせます。けれど…真理子は…娘は…都会に憧れ大学も東京の大学に行きたいと…随分妻や達弘から反対されましたが…私やお義父さんの援助で娘は村を後にしたのです』
そんな話は真理子さんから聞いた事はなかった。てっきり絵の勉強をしたい彼女を尊重して送り出されたものだと思っていた。
宗二さんは淡々と言う。
『田舎だから、不便だから、そんな風に子供の時からしょっちゅう言っていました…』
『はぁ…そうだったんですか』
『わかるでしょう?住んでいる場所を教えれば、好奇心旺盛な村人は押し寄せるように彼女に便りを出すでしょう。特に優子やお義父さんなんかは…中には直接会おうとする者もいるかもしれません』
『………嬉しい事なんじゃないんですか?』
宗二さんは首を大きく左右に振って否定した。
『あの娘にとっては苦痛他ならないのです。恐らくはこの村から離れた土地に鬼ヶ瀬塚の事を持ち込みたくはないのでしょう』
淡々とまるで当たり前に語る宗二さんに、なんだか僕は無性に違和感を感じた。
『何故真理子さんは…村を……?』
『ここにいれば確かに幸せに暮らせます。けれど…真理子は…娘は…都会に憧れ大学も東京の大学に行きたいと…随分妻や達弘から反対されましたが…私やお義父さんの援助で娘は村を後にしたのです』
そんな話は真理子さんから聞いた事はなかった。てっきり絵の勉強をしたい彼女を尊重して送り出されたものだと思っていた。