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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
『少し…話しすぎましたね』
宗二さんはかすれた声で静かに言った。
僕から目線を離し、数m先にある荒岩家の家屋を見つめる。
庭の堂々と育った松の木に隠れた二階部分で動きがあった。
誰かがピシャリとカーテンを締めるのが見えた。
首筋がゾクッとした。
まるで終始見られていたかのようだ。
この村は何かがおかしい。
僕はそう思った。
『行きましょう、信人くん。皆待っています。長旅で疲れているのに…こんなくだらない私の話に付き合ってくれてすまないね』
『そんな事ないですよ。また時間があれば是非改めて村を案内してください…』
"社交辞令"僕の放った言葉はそんな色を強く放ちながら、宗二さんの額部分にぶつかり消えていった。
宗二さんに続いて玄関をまたぐ頃にはあたりはじき夜のとばりを落とす色をしていた。
ひぐらしがカタカタ鳴き、牛蛙が盛大にわめいている。
気温も落ちて、どこか肌寒い。水田の湿度を感じた。
『案内なんかより、立ち話で時間が過ぎましたねぇ』
宗二さんはオレンジ色に輝く空を眺めながら自転車を玄関脇に立て掛けた。
『これは夜には一降りしそうですね。空気が湿ってる』
宗二さんはかすれた声で静かに言った。
僕から目線を離し、数m先にある荒岩家の家屋を見つめる。
庭の堂々と育った松の木に隠れた二階部分で動きがあった。
誰かがピシャリとカーテンを締めるのが見えた。
首筋がゾクッとした。
まるで終始見られていたかのようだ。
この村は何かがおかしい。
僕はそう思った。
『行きましょう、信人くん。皆待っています。長旅で疲れているのに…こんなくだらない私の話に付き合ってくれてすまないね』
『そんな事ないですよ。また時間があれば是非改めて村を案内してください…』
"社交辞令"僕の放った言葉はそんな色を強く放ちながら、宗二さんの額部分にぶつかり消えていった。
宗二さんに続いて玄関をまたぐ頃にはあたりはじき夜のとばりを落とす色をしていた。
ひぐらしがカタカタ鳴き、牛蛙が盛大にわめいている。
気温も落ちて、どこか肌寒い。水田の湿度を感じた。
『案内なんかより、立ち話で時間が過ぎましたねぇ』
宗二さんはオレンジ色に輝く空を眺めながら自転車を玄関脇に立て掛けた。
『これは夜には一降りしそうですね。空気が湿ってる』