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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二
確かにどことなく水分を多く含んだ香りが辺りに立ち込めている。
じきに夕立くらい来そうな勢いだ。
『ほら、入って』
宗二さんに言われて玄関に上がり、靴を脱いだ。
宗二さんは腰を屈めて大きな引戸状の扉にカチャリと鍵を閉める。
『さぁ、行って』
宗二さんに促され、僕は居間へと足を運んだ。
例のちゃぶ台前には優子ちゃんと吾朗さん、そして艶のある白髪を頭頂部で団子状にした老婆がいた。
『ノブッ!!どこ行っどったんじゃ!?』
優子ちゃんが笑顔で言う。そして"はよ!!はよ!!"と、自身の隣に座布団を引き寄せポンポンそれを叩いた。
『随分なつかれてますね』
宗二さんが微笑んだ。
僕は照れながらも優子ちゃんの隣に座った。優子ちゃんはとても嬉しそうだ。僕の顔を観察するように見つめ時折
『いいだんこじゃあ…』
と呟いた。
調理場からは何やら小気味良い音がする。そしてジュージューと野菜や肉を炒めるそそる匂いが流れ込んだ。
『信人くん』
僕の真正面、吾朗さんの隣にゆっくり正座した宗二さんは先程から何かをブツブツ呟いている老婆を見ながら言った。
『彼女はカヤさん、真理子の祖母だよ』
つまりは吾朗さんの奥さんにあたる方だ。
じきに夕立くらい来そうな勢いだ。
『ほら、入って』
宗二さんに言われて玄関に上がり、靴を脱いだ。
宗二さんは腰を屈めて大きな引戸状の扉にカチャリと鍵を閉める。
『さぁ、行って』
宗二さんに促され、僕は居間へと足を運んだ。
例のちゃぶ台前には優子ちゃんと吾朗さん、そして艶のある白髪を頭頂部で団子状にした老婆がいた。
『ノブッ!!どこ行っどったんじゃ!?』
優子ちゃんが笑顔で言う。そして"はよ!!はよ!!"と、自身の隣に座布団を引き寄せポンポンそれを叩いた。
『随分なつかれてますね』
宗二さんが微笑んだ。
僕は照れながらも優子ちゃんの隣に座った。優子ちゃんはとても嬉しそうだ。僕の顔を観察するように見つめ時折
『いいだんこじゃあ…』
と呟いた。
調理場からは何やら小気味良い音がする。そしてジュージューと野菜や肉を炒めるそそる匂いが流れ込んだ。
『信人くん』
僕の真正面、吾朗さんの隣にゆっくり正座した宗二さんは先程から何かをブツブツ呟いている老婆を見ながら言った。
『彼女はカヤさん、真理子の祖母だよ』
つまりは吾朗さんの奥さんにあたる方だ。